淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④
第10章 予期せぬ真実
予期せぬ真実
結局、その夜だけ春泉は実家に泊まることになり、秀龍は春泉には逢わずに帰った。むろん、秀龍は屋敷を飛び出した春泉を連れ戻しにきたのである。
チェギョンは秀龍に、今夜は春泉をまだ帰せないから、ひと晩泊めてやっても良いかと訊ねた。彼は快諾し、明朝、また迎えにくると言って帰ったそうだ。
その夜、春泉は母と生まれて初めて風呂に入った。
チェギョンはまるで宝物を磨くように、糠袋で春泉の身体を丹念に洗い上げた。
ほの白い湯けむりを通して、春泉の白い身体が浮かび上がる。まだ初々しさをわずかに残しながらも、その肢体はもう十分に豊かな大人の女のものだ。
チェギョンの身体もやや丸みを帯びているものの、まだまだ十分成熟した美しさを保っていた。
チェギョンは春泉の身体を丁寧に洗ってやりながら、優しい声音で言った。
「いつのまに、こんなに大きく綺麗になっていたのかしらね。これでは、お預けを喰らわされた秀龍さまがお気の毒だわ」
と、少し意味の判らないことを言い。
眼尻に滲んだ涙を拭うように眼許をこすった。
「もっと早くに大切なことに気づくべきだった。そうしていたら、あなたの成長を傍で守り、母としての歓びも味わえたでしょうにね」
娘と一緒に水入らずで湯舟に浸かりながら、チェギョンは娘に色々な話を聞かせたのだった―。
ひと夜明けた翌朝、柳家の前に馬が止まった。堂々たる体軀の鹿毛である。その鹿毛からひらりと降り立ったのはむろん皇秀龍であた。
今日の秀龍は随分とめかし込んでいた。薄紫の上質のパジチョゴリに鐔広の帽子を被り、帽子には顎の部分に翡翠と瑪瑙を交互に連ねた玉が垂れ下がっている。
いつもは殆ど全く鏡など覗き込んだことのない男が屋敷を出る前は、鏡を幾度も覗いていたほどの気合いの入れ様だ。こんなところを香月に見られでもしたら、またぞろ何と言ってからかわれるか知れたものではない。
母に来客用の室で待つように言われ、春泉はそこにいた。
結局、その夜だけ春泉は実家に泊まることになり、秀龍は春泉には逢わずに帰った。むろん、秀龍は屋敷を飛び出した春泉を連れ戻しにきたのである。
チェギョンは秀龍に、今夜は春泉をまだ帰せないから、ひと晩泊めてやっても良いかと訊ねた。彼は快諾し、明朝、また迎えにくると言って帰ったそうだ。
その夜、春泉は母と生まれて初めて風呂に入った。
チェギョンはまるで宝物を磨くように、糠袋で春泉の身体を丹念に洗い上げた。
ほの白い湯けむりを通して、春泉の白い身体が浮かび上がる。まだ初々しさをわずかに残しながらも、その肢体はもう十分に豊かな大人の女のものだ。
チェギョンの身体もやや丸みを帯びているものの、まだまだ十分成熟した美しさを保っていた。
チェギョンは春泉の身体を丁寧に洗ってやりながら、優しい声音で言った。
「いつのまに、こんなに大きく綺麗になっていたのかしらね。これでは、お預けを喰らわされた秀龍さまがお気の毒だわ」
と、少し意味の判らないことを言い。
眼尻に滲んだ涙を拭うように眼許をこすった。
「もっと早くに大切なことに気づくべきだった。そうしていたら、あなたの成長を傍で守り、母としての歓びも味わえたでしょうにね」
娘と一緒に水入らずで湯舟に浸かりながら、チェギョンは娘に色々な話を聞かせたのだった―。
ひと夜明けた翌朝、柳家の前に馬が止まった。堂々たる体軀の鹿毛である。その鹿毛からひらりと降り立ったのはむろん皇秀龍であた。
今日の秀龍は随分とめかし込んでいた。薄紫の上質のパジチョゴリに鐔広の帽子を被り、帽子には顎の部分に翡翠と瑪瑙を交互に連ねた玉が垂れ下がっている。
いつもは殆ど全く鏡など覗き込んだことのない男が屋敷を出る前は、鏡を幾度も覗いていたほどの気合いの入れ様だ。こんなところを香月に見られでもしたら、またぞろ何と言ってからかわれるか知れたものではない。
母に来客用の室で待つように言われ、春泉はそこにいた。