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淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④

第14章 月下の真実

 長春は小虎を優しい眼で見つめている(ように春泉には見えた)。そうすると、今度は仔猫が負けじとばかりに長春に甘えるようにすり寄ってゆく。
 長春は小虎にも仔猫にも分け隔てせず、優しい。それはまるで、良人と子どもが母親(妻)の愛情を奪い合っている(?)ようにも思えて、どこか微笑ましくも滑稽だ。
 どこか気紛れなところのあった素花には甘えられなかった小虎も、長春には好きなだけ甘えられるらしい。
 やはり、男というものはおしなべて人間も猫も一緒にいて安らげる女を好むものなのだろう。―と、一人で納得する春泉である。
「小虎はよほど長春が好きなのね」
 春泉がにっこりと微笑む。
「こうして仲睦まじく寄り添っている様を見ると、まるで夫婦のようだな」
 秀龍も笑いを堪え切れないようだ。
 〝そうですよ〟とでも言いたげに、小虎が鳴いた。その隣で長春もまたワンと鳴く。あたかも意気の合った夫婦が歌を歌っているようだ。
 まさに、夫唱婦随である。
「おい、お前。良い奥さんが見つかって良かったな」
 秀龍の声に、小虎が応えるようにニャとひと声鳴いた。その表情が照れているように見え、春泉は明るい笑い声を上げた。
                 (ひとまず完結?)

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