
淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④
第15章 八年後
そのせかどうか、春泉は秀龍すら理解できない香月の心の闇を理解し、男ながらも女として生きようとする香月の数奇な生き方に共感を示したのだ。
その香月と今、このような皮肉な立場で相対しなければならないとは、考えれば考えるほど、世の中は無情なものだ。
香月、いや申英真にもう一度、逢ってみたいものだと今でも無性に思うときがある。
が、そんなことを言っても、秀龍を心配させたり困らせたりするだけだと判っているから、けして言わなかった。
「香月って、誰なのですか? お父さま」
突如として、春泉の物想いは恵里のあどけない声で途切れた。
春泉はハッと息を呑み、秀龍を見つめた。秀龍は春泉の視線をやわらかく受け止め、更に幼い娘を見て微笑む。
「そうだな。-父にとって、とても大切な人だ」
傍から春泉も言い添える。
「私にとっても、大切な方ですよ、恵里」
恵里は不思議そうに瞳をまたたかせている。
聡いといっても、まだ七歳の幼子なのだ。春夷隅は恵里の小さな身体を引き寄せ、つふらな瞳をのぞき込んだ。
その香月と今、このような皮肉な立場で相対しなければならないとは、考えれば考えるほど、世の中は無情なものだ。
香月、いや申英真にもう一度、逢ってみたいものだと今でも無性に思うときがある。
が、そんなことを言っても、秀龍を心配させたり困らせたりするだけだと判っているから、けして言わなかった。
「香月って、誰なのですか? お父さま」
突如として、春泉の物想いは恵里のあどけない声で途切れた。
春泉はハッと息を呑み、秀龍を見つめた。秀龍は春泉の視線をやわらかく受け止め、更に幼い娘を見て微笑む。
「そうだな。-父にとって、とても大切な人だ」
傍から春泉も言い添える。
「私にとっても、大切な方ですよ、恵里」
恵里は不思議そうに瞳をまたたかせている。
聡いといっても、まだ七歳の幼子なのだ。春夷隅は恵里の小さな身体を引き寄せ、つふらな瞳をのぞき込んだ。
