淫らな死体~お嬢さま春泉の秘密~④
第4章 母の恋
次の刹那、少年の顔から冷めた表情はかき消え、母猫に甘えるような蕩ける表情になった。
「ねえ。折角の機会なんだからさ、もっと思いきり愉しもうよ。あなただって、俺とこうしていて、満更でもないんでしょ? まだ何もしてないのに、俺があなたにしてあげたことで、何度、感じたの? 俺なら、あなたをもっと感じさせてあげられるよ。あなたが望むなら、天の高みまで連れていって、この世の極楽を見せてあげる」
「あなた、自分が何を言っているか判って―」
言いかけたチェギョンの唇は狂おしい口づけで塞がれ、その科白の続きは少年の口に呑み込まれた。
舌と舌を絡め合う口づけは延々と続き、二人の唾液が混じり合う淫猥な水音がしめやかな静寂(しじま)に溶けてゆく。
しばらく口づけを堪能した後、少年は漸くチェギョンを解放した。その形の良い唇から唾液が糸を引いて滴り落ちている。
到底、十七歳の少年とは思えないほどの凄絶な色香が匂い立つ。元々が天が与え給うた奇蹟といっても遜色のない美貌である。長い前髪がひとすじ額にしどけなく乱れて落ちているのさえ、凄艶さが際立っていた。
「あなた―」
一体、どこの誰なの?
そう言おうとした彼女の唇に彼の人さし指が当てられた。
少年が切れ長の双眸をわずかに眇めてチェギョンを眺めている。
長い口づけのために花のような唇は腫れ上がり、棗形の黒い瞳はすっかり潤んでいた。頬も身体も全身が上気して、桜色にほんのりと染まっている。
もっとも、彼女自身は自分の変化に気づいてはいなかったが―。
「あなたこそ、本当に何ものなの? 何て綺麗なんだろう」
少年の言葉に、チェギョンは複雑な笑みで応えた。
「お世辞なんて言わなくて良いのよ。私はもう三十五ですもの。あなたから見たら、冗談ではなく、お母さんの歳だわ」
「もう、何も言わないで」
少年がチェギョンの耳許で囁く。
「あなたのこの可愛らしい小さな耳朶に似合う耳輪がきっと俺の持ってきた箱の中にあるはずだから、後で探してあげるよ。それから、ほっそりとした指に丁度合う指輪も、艶やかな黒髪を飾る簪も。きっと、あなたの気に入るものがあるはずだ」
「ねえ。折角の機会なんだからさ、もっと思いきり愉しもうよ。あなただって、俺とこうしていて、満更でもないんでしょ? まだ何もしてないのに、俺があなたにしてあげたことで、何度、感じたの? 俺なら、あなたをもっと感じさせてあげられるよ。あなたが望むなら、天の高みまで連れていって、この世の極楽を見せてあげる」
「あなた、自分が何を言っているか判って―」
言いかけたチェギョンの唇は狂おしい口づけで塞がれ、その科白の続きは少年の口に呑み込まれた。
舌と舌を絡め合う口づけは延々と続き、二人の唾液が混じり合う淫猥な水音がしめやかな静寂(しじま)に溶けてゆく。
しばらく口づけを堪能した後、少年は漸くチェギョンを解放した。その形の良い唇から唾液が糸を引いて滴り落ちている。
到底、十七歳の少年とは思えないほどの凄絶な色香が匂い立つ。元々が天が与え給うた奇蹟といっても遜色のない美貌である。長い前髪がひとすじ額にしどけなく乱れて落ちているのさえ、凄艶さが際立っていた。
「あなた―」
一体、どこの誰なの?
そう言おうとした彼女の唇に彼の人さし指が当てられた。
少年が切れ長の双眸をわずかに眇めてチェギョンを眺めている。
長い口づけのために花のような唇は腫れ上がり、棗形の黒い瞳はすっかり潤んでいた。頬も身体も全身が上気して、桜色にほんのりと染まっている。
もっとも、彼女自身は自分の変化に気づいてはいなかったが―。
「あなたこそ、本当に何ものなの? 何て綺麗なんだろう」
少年の言葉に、チェギョンは複雑な笑みで応えた。
「お世辞なんて言わなくて良いのよ。私はもう三十五ですもの。あなたから見たら、冗談ではなく、お母さんの歳だわ」
「もう、何も言わないで」
少年がチェギョンの耳許で囁く。
「あなたのこの可愛らしい小さな耳朶に似合う耳輪がきっと俺の持ってきた箱の中にあるはずだから、後で探してあげるよ。それから、ほっそりとした指に丁度合う指輪も、艶やかな黒髪を飾る簪も。きっと、あなたの気に入るものがあるはずだ」