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日曜日の夜は

第7章 天気予報

「雨なら迎えに来なくていい」

 彼女の無愛想な声が、携帯電話から空ろに響く。

「またそうやって試す」ため息まじりに呟いた。

「そのネタ何回目だよ、もっと気のきいた話しろよ」

 心と裏腹に、僕はそんないじわるなことを口走った。

「いいっ、もういいよ」彼女がムキになって言うと、声がわずかに高くなる。強情な彼女の言葉を聞きながら、僕は薄笑いを浮かべてしまう。

「わかったわかった。雨でも晴れでも歩いて行くよ、駅まで」

「どういうこと?」怪訝そうに彼女がたずねてくる。

「ううん」僕は一呼吸置いて、切り出した。「一ヶ月ぶりに会うから。そのまま電車に乗って、どこか遠くへ行こうよ」

 少しの沈黙のあと、「ふうん」と彼女が何かを考えるように言った。

「別にいいけどっ」すぐに語調を変えてきた。

「明日、晴れるかなあ?」

 そのやわらかな口調に、彼女の希望を感じ取り、僕は顔をほころばせ、

「そうだね」と言った。

 そして、思わずテレビのリモコンをたぐりよせ、すべてのボタンを押していく。天気予報の画面で、リモコンの上の親指が止まって、僕は吹き出した。

「雨だ。……でも迎えに行くよ。歩いて」
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