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第16章 妄信的なナニカ
「あー……やっぱないよなぁ」
戌原西地区の明かりが一切ない路地裏で、千尋は手にしていた学生鞄の中をげんなりとした顔で見つめていた。
そこは所狭しと並ぶ建物の間から僅かにのぞく月明かり以外、ほぼ暗闇という場所だった。
当の千尋は何も躊躇うことなくよそ見をしながらその場所を歩いて見せているが、本来ならば三歩歩いただけで何かにぶつかるような場所である。
やけに古い自動車、用途不明の箱、放置されているゴミの山、住居をもたない人間――その場にあるすべての障害物を千尋は避けて歩いていた。
五歩歩けば面倒事に巻き込まれるこの地区でも、そんなことを無造作にやってのける人間には関わりたくないとでも言いたげに、誰も彼もが千尋に目線ひとつくれていない。