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第16章 妄信的なナニカ


 ――俺の知らないうちに、別の男に抱かれたりしてないよな……?

 ここ二日盗聴できなかったこともあり、そんな不安が千尋の頭をよぎる。

 昨日の帰りも遅かったうえ、今日はらしくもなく貧血だ。

 何か急な変化が悠理の身に起きている気がしてならなかった。

 
「……そんなわけ、」


 ない。そう自分へ言い聞かせるように呟く千尋だったが、表情は完全に引きつって目の焦点は大きくぶれていた。

 これまで悠理をそういう目で見つめる輩は全て千尋が排除してきた。

 彼女を汚すような連中なんて、死んでも仕方がないとすら思ってきたのだ。

 ――明日には理由、掴んでおかねーと……。 

 そうでなければ、今にも悠理の身体を暴いて行為の痕跡を探し出してしまいそうだった。
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