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第16章 妄信的なナニカ


「……やめときゃ、よかった」


 悠理の自室にて、彼女をベッドにおろした後千尋は口元を抑えてその場に数分立ち尽くしていた。

 理由は簡単だ。

 悠理の自室へ行くためには浴室の前を通らなければならず、その扉を目にして千尋は昨晩の映像を思い出してしまっていた。

 昨日悠理の痴態を眺めながら達してしばらくした後、さすがに罪悪感を覚えたためあの光景は忘れようとしていたのだ。

 しかし、今の無防備な寝顔と投げ出された四肢、昨日の官能的な様子を重ねると、呼吸が荒くなっていくのが自分でもわかった。

 ――ネクタイは諦めて、さっさと出ねーと……。

 そう悠理に背を向けようとした時だった。


「んっ、ぅ……」


 ただの寝言や寝息とは明らかに違った声を上げて、悠理の身体がぴくりと動いた。

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