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All Arounder

第12章 That's Theft






『何でそんなに…笑顔が作れるんですか…?』




自分は何を聞いているんだろう




「何でって…」



ゆうひが返答に困っているのを見て
姫は俯いた




『あたし…笑えないんです』




こんなことを


大志の母親に話したところで




何かが変わるわけではないのに…





『笑えないん…です』




胸が熱くなってきた



吐き出さないと



あたしが壊れてしまいそうだ





『あたし…』


「そっか」





温かい手は




優しくあたしを抱きしめてくれた





「笑えないから、笑いたいの?」




『…』




何度も頷いた



何度も何度も



頷いた






『大志はあたしを…笑わせてやるって、言ってくれたん…です…』



「うん、うん」




『でもあたし…全然笑ってあげられなくて…
大志を怒らせたりばっかで…』



何であたしは笑えないんだろうって…


考えれば考えるだけ…




『…笑顔を作れる人が…どんどん羨ましく…なっていってぇ…』



ギュッと手に力が入る





「羨ましいのか…でもね、姫ちゃん…」




ゆうひは姫をゆっくり離すと、口を開いた





「姫ちゃんが笑顔になれなくても…
姫ちゃんは人を笑顔にさせられるよ?」




『え…?』




優しい笑顔が




また目の前で出来た






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