All Arounder
第14章 Secret Smile
「何だおめぇ、室長になってもわざわざオレんとこに足運ぶのかよ」
「動いてる方が性に合うんだよ」
この男は藤野泰輔(フジノ タイスケ)
オレの同期で、オレの姉の夫でもある藤野は
この前、室長に昇格したばかりだった
「で、斉藤…事件の話なんだが…」
藤野は机に資料を置いた
「今回は何だー?」
斉藤は椅子に座り、資料を手に取った
「誘拐事件だ」
「誘拐?」
ざっと資料に目を通すと、藤野は口で説明し始めた
「誘拐されたのは、とある財閥の令嬢。
おそらく、亡くなった父親の遺産の関係で誘拐されたようだ」
「ふーん…"西浦"?
あの西浦財閥か」
「ああ、そうだ」
「でもよ、確かこの事件って警察の方で捜査中じゃなかったか?」
斉藤の問い掛けに、藤野は頷きながら答えた
「その通り。だが警察だけじゃどうも解決できそうにないみたいでな…
だからこうやって刑事科の方に回ってきたんだ」
「…何で?」
たいして難解な事件でもなさそうだけどなぁ…
「不思議なことにな…
誘拐された令嬢の手がかりが、全くと言っていいほど見つからないんだ」
藤野は少し、ワクワクとした目を向けてきた