All Arounder
第15章 Jealous
『え、何で?』
すると井上は、尋ねた姫を無理矢理引っ張り小路に入った
姫の両肩を掴み、自分に向けさせると
今まで見たことのないような表情を見せたのだ
「大志みてーに…名前で呼んで…」
『…』
井上らしくない
もちろん、この人と触れ合ったことは数少ないが
らしくないと思った
「…だめ?」
『べ、別にいいけど…』
すると井上は、嬉しそうに笑ったのだ
「ありがと、姫ちゃん」
井上はまた道へ出て、大志たちをつけて行った
『…』
どうしたんだろう…?
疑問に思いながらも、姫も後を追った
―――――
それから数時間経った
大志と円香はいろんな店に出たり入ったり
その度に井上と姫も行ったり来たり…
時刻は4時
辺りは買い物客や帰宅途中の学生なんかで賑わってきていた
円香は時間を確認すると
「大志、ちょっと来て」
と、道端のベンチの前まで歩いた
「何すんだ?」
「もうちょっと待ってね」
そう言うので、大志は仕方なくその場で待っていた
人を探しているのだろうか、円香は辺りをキョロキョロと見回している
そこで二人の動きが止まったので、井上と姫も建物の陰に隠れて様子を窺っていた