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「で、あんたは誰だよ？」




井上は真っ赤に腫れた頬を押さえた





「うちは葵(ｱｵｲ)や。
あんたは？」




葵という女は、不機嫌そうに壁にもたれて座っている





「…井上退斗」




「退斗か…あんた、何でわざわざ溺れに来てたん？」




「俺はお前が水ん中飛び込んだのを見たから…助けようとしたんだよ」




井上がそう言うと、葵はくすっと笑った




「なんや…うちが自殺でもしたと思ったん？」




「そーだよ、素っ裸だったからびっくりしたけどな」




「そらそや、素っ裸で自殺なんぞ…
素っ裸…？
お前見とったんかい!!!」



葵はそばにあった石ころを投げつけた




「あっぶね!!
何しやがんだお前…ってか気づくのおせーな!!」



「黙らっしゃい!!
うちの裸をただで見せられっかい、金払いぃ、金!!」




「誰が払うか。んで、何でお前飛び込んだんだよ？」




「うちはこの山に来たら絶対あれをすんねん
文句あんの？」




「別に…変な趣味だな」





また石を投げつけられた






「あんたもいっぺんやってみ、うちはこの山が好きやねん…水の中も、全部」




ふと見せた葵の落ち着いた表情を、井上は何となく見つめた




「…」




そうやって大人しい顔しとけば…


いいのによー…