All Arounder
第49章 Sibling
着物姿の、落ち着いた容貌をした男は
美空から手を離した
その瞬間、美空は急いで男から離れ、壁際へと逃げ込んだ
「…ゆうひちゃんじゃ…ないね」
「…」
何で…知ってるの?
「それ…ぉ母さんの…名前…」
美空は震えた声で、そう言った
「お母さん?」
男は目をパチクリさせると、ククッと笑った
「何だ、もしかして君、ゆうひちゃんの娘?」
美空がコクコクと頷くと、男は美空のそばに寄ってしゃがみ込んだ
「父親は、斉藤…」
「…正貴…」
「そうか、そりゃ怖い思いさせてごめんね」
男は美空の頭にポンッと手を置いた
美空は一瞬、ビクリと体を震わせたが
すぐに男の顔に見入ってしまった
「あなたが…小泉さん?」
「そうだよ」
小泉は、さっきとは別人のように
優しい笑顔を美空に向けた