狼と白頭巾ちゃん
第17章 突然の雨で…
その日は、初夏だというのに涼しかった。
風は湿気を含み、太陽は厚い雲に覆われ、
今にも雨が降り出しそうな、そんな日だった。
(夜には晴れるかなぁ…)
木の上でいつものように寝転びながら、シンは空を見上げていた。
何事か思案している風のシンだったが、急に口元を緩ませると、むくりと起き上がった。
やがて駆けて来る足音が近付き、ライラが現れると、シンは急いで木から飛び降りた。
「おはよう、ライラ」
「おはよ〜、シン!」
にっこりと微笑みあって挨拶を交わしたあと、シンが手を差し伸べる。
ライラはその手を取り、シンに身体を預ける。
ライラの首と膝の裏に、シンが両腕を回して抱き上げると、お姫様抱っこの形になり、
そうしてシンがライラを抱えて、森の中を駆ける。
…それが、ここ最近の二人の、当たり前の日常だった。