狼と白頭巾ちゃん
第20章 空の花
(シン、ありがとう…)
言葉に言い表せない想いを、ライラはシンを抱き締める事で伝えた。
シンもそれに応えてライラを抱き締めた。
抱き締めながら、シンが囁いた。
「ライラ…、花園を俺と歩きたかったって、前言ってくれたよね?」
「…うん」
「今は花の季節じゃ無いから、君と花園を歩くのはもう少し先になるけど…」
「…うん?」
「でも、この星空…。まるで空に咲いた花みたいに見えないかい?」
「え?」
「だから、この星空が花の代わりになるかと思って…。君に見せたかったんだ…」
「シン…」
二人は見詰めあった。
シンの胸には、ライラに星を見せられた喜びが。
ライラの胸には、シンが自分の他愛ない一言を覚えていて、尚且つ喜ばせようと考えていてくれたことへの喜びが。
それぞれ、揺れる瞳に浮かんでいた。
二人は自然と顔が近づき、どちらからとも無く唇を重ねていた。
そんな二人の姿を、
満天の星空と細い月だけが、見詰めていた。