狼と白頭巾ちゃん
第21章 あげられるもの
シンとライラは、大きな一枚岩に並んで寝転んだ。
その岩は平らな形をしていて、たまにシンが寝床にしている場所であった。
先ほどまで二人がいたのは、森の中にある山の頂上で。
そこに比べれば、今いる岩の上からの星は幾分小さく見えるものの、寝転ぶことで視界が星空で埋め尽くされ、また先ほどとは違う、開放的な感動がライラにはあった。
「シンはいつもこんなところで眠っているのね。いいなぁ…、こんなところで寝られたら、とっても素敵な夢が見られそう」
岩の表面はひんやりとしていて、夏場の寝床にするにはうってつけに思われた。
岩が大きい為、周囲に視界を遮るものなど何もなく、満天の星空を、まるで独り占めしているかのような錯覚さえした。
「そうだね…。独りの時はそんなこと思わなかったけど、ライラといると俺もそんな風に思えるよ…」
視界は空に固定して、シンは言った。
「そうなの?」
ライラが少し首を動かしシンの表情を眺めると、どこか寂しそうな瞳をして空を見るシンがいた。
口元は笑っているが、目だけを見ると泣いているようにすら思え、ライラは胸が締め付けられた。