狼と白頭巾ちゃん
第21章 あげられるもの
(…そうだ、シンはいつも独りきりでこの空を…)
自分が放った言葉の残酷さに気付き、ライラは愛しいひとを傷付けてしまったことを悔やんだ。
シンはそんなことでライラを責めたりなどはしない。
分かっていて、いつの間にかその優しさに胡座をかいていた自分が、ひどく情けなかった。
「ごめんなさい、羨ましがったりなんかして。私、無神経だった…」
居た堪れず、シンの腕を掴み謝罪したライラに、シンはやはり優しかった。
「なに、どうしたの、急に⁈」
寂しさを湛えていた瞳からその影を消し、シンはライラの頭を撫でながら言った。
「ライラが謝る必要なんて無いじゃないか。今、こうして一緒に居てくれてるんだから」
ね?…と微笑みかけられ、ライラの胸は更に締め付けられた。
この優しい愛しいひとを、もっと幸せにできないのかと。
そして、自分が幸せにしたいと思った。
自分は喜ばせてもらってばかりで、何も返せていないような気がして。
だからこそ、どうしてもシンを喜ばせたかった。
(今の私に出来ることは、何かないかしら…)
考え、ライラは気がついた。
何も持たない自分にも、あげられるものがあることに。
だからライラは、思い切って口を開いた。
「シン…、私はあなたをもっと幸せにしたい。だから…」
「ライラ…?」
何かを強く決意した瞳で見詰めるライラ。
シンは何事かとライラの言葉に耳を澄ました。
「だから…、私の全部、あなたにあげる」