狼と白頭巾ちゃん
第21章 あげられるもの
「‼」
シンは尚も信じられず、固まったまま動けずにいた。
ただ、胸に密着したライラの身体が小刻みに震えていて、シンの腕を締め付けた。
(ライラにこんなことを言わせてしまうなんて…)
きっと、ライラは内心怖いに違いない。
ただ自分を喜ばせようとして、彼女はそんな事を言い出したんだ、と、シンは思った。
確かに自分はライラが欲しくて仕方ない。
しかし無理強いするつもりなど無くて…。
だから、ライラはきっとこんなことを言い出したに違いないんだ。…と。
シンはそっとライラの肩に手を置いた。
瞬間、ライラの肩はピクリと反応する。
(ほら、やっぱり…)
シンはゆっくりライラを引き剥がすと、まだ俯き目を合わさないライラに囁いた。
「無理しないで良いんだよ?ライラ…。君は、こんなに震えて怯えているじゃないか…」
ばっと顔が上がり、ライラと目が合った。
その瞳は潤んだまま、驚きに見開かれていた。
「俺を幸せにしたいと想ってくれるのは、とても嬉しいよ?けど、そんな理由で軽はずみに言うべきことじゃない。君はまだ幼いし…「シンは何も分かってない‼」
諭すように言葉を紡いでいたシンを、ライラの怒りの声が遮った。
「軽はずみなんかじゃないわ!それに、今更子供扱いなんかしないで!」
「っライラ…」
「私がどれだけあなたを想っているか、あなたは分かって無い!私は…!私は…」
「私こそが。あなたとひとつになりたいのよ、シン!」
「ラ…⁈‼」
「もう!こんなことまで言わせないで⁈恥ずかしいんだもの、震えたっていいじゃない!シンのバカぁ‼」
想いの全てを吐き出すと、ライラは恥ずかしさの余り、シンから背を向けようと身体を動かした。