狼と白頭巾ちゃん
第23章 選び取る明日
「身体、平気…?」
ライラを腕に抱え、二人で星を眺めながら、シンは聞いた。
「…うん」
東の空がうっすらと白んでいて、この夜が間も無く終わろうとしていることを告げている。
ライラは両親が眠りから覚める前に家に戻らねばならず。
それでも。
二人は離れ難くて、時間を惜しむように寄り添い、言葉少なに互いの存在を確かめ合った。
ライラはひとつ、決めていたことがあった。
二人があまり会話をしないのには、その『決めていたこと』を、シンに伝えたからと云うところもある。
そのことを聞いて、シンは初めひどく動揺し、考え直すよう、何度もライラに言ったのだが。
ライラの決意は固く、シンはもう、何も言えなくなってしまっていたのだ。
ライラのほうも思うところがあり、寄り添い、同じように星を見上げながら、しかし二人はそれぞれ違うものを見ているようであった。
「そろそろ…、行かなきゃね…?」
朝はもう、間近に迫っていた。
ライラがシンの顔を見ながら言うと、シンもライラの顔を見下ろし言った。
「あぁ……。そうだね…」
まだ暗い闇の中、俯き話すシンの表情は、ライラには影になり、よくは見えなかったが。
声色には、苦しそうな、何かを諦めたような、そんな切なげな雰囲気が宿っていた。