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狼と白頭巾ちゃん

第8章 それぞれの想い

瞬間、シンは苦悶の表情を浮かべた。

けれどひとつ大きな息を吐くと、次にはその口元は…、笑っていた。

(……やっぱり、ね…)










「シンさっ……、シンっ‼」

(…っ⁈)

シンは、ハッと目を見開いた。

ライラは逃げなかったのだ。

さらに、呼び掛けに応えられずにいるシンを余所に、数歩前に歩みを進める足音。

ライラは、シンまであと少しという距離まで近づいた。

驚きと戸惑いで、瞬きすら忘れ、立ち尽くすシン。

シンとライラの間にはもう、シンが身を隠す、ただ一本の木の大きさ分しか、距離は残っていなかった。

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