狼と白頭巾ちゃん
第9章 ふたりの距離
それから二人は、一本の木を挟んで向かい合う形で会話をした。
まるで昔からの友達のように、打ち解けた空気をまとって…。
「ライラ、そのままで聞いてくれるかい?」
「なぁに、シン」
(信じるってライラは言った!その言葉を俺も信じよう…)
「俺、さっき“良い案”があるって言っただろ?」
「ええ、でもひとつ問題があるって…」
「そう。でも、君が俺を信じてくれるなら、問題は問題じゃ無くなるんだ」
「そうなの⁈」
「あぁ」
「実はこの森の奥には、誰にも知られていない花園があるんだ。さっき君にあげた花も、そこから摘んできたんだけど…」
「え⁈ホントに⁈」
次の言葉を発する前に、シンは大きく深呼吸をした。
「うん。で、俺、君をその花園に案内したいんだけど、どうかな」
森の奥は深く薄暗い。森をよく知らない者が足を踏み入れるのは、とても危険な事だと誰にでも分かる。
シンは、ライラが断わるのでは無いかと、少し怯えていた。信じようと自分に言い聞かせても、自然、鼓動は早まった。