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狼と白頭巾ちゃん

第9章 ふたりの距離

シンは、今だ興奮冷めやらぬライラに向かって、暗い森の危険さを、訥々と話して聞かせた。

「だ、だからな…、問題ってのはつまり…。それで…、俺が云いたいのは…」

初めは襲うつもりだった自分が、その欲望の対象となるべき筈だった少女に、何故こんな説明をしているのか。

ちぐはぐな状況に自ら陥ってしまった困惑を纏っているためか、シンの言葉は何とも歯切れが悪かった。

(何をやってるんだ、俺は…)

しかし、そんなシンの思惑など気付きもせず、聞きながら段々と落ち着きを取り戻しつつ、ライラは、たまに「ふん、ふん」と、頷く声を上げ、シンの説明を素直に聞いていた。

「…と、そういう訳だから。分かったかい?」

ひとしきり説明をし終えて、シンは妙な緊張から開放され、ふぅっと、溜息をついた。

(なんだか、自分から『俺に警戒しろ』って言ってる気分だ…)

…気分ではなく、まあつまりはそう云うことなのだが……

「シンの言いたいことは分かったわ。それで?」

ライラの、あっけらかんとした返事。


(えぇぇ〜……)



シンは全身の力が抜けていくのを感じていた。

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