狼と白頭巾ちゃん
第10章 光の中へ…
「本当に?本当に分かったのかい⁈」
シンは聞いた。
「だから分かったって言ってるじゃない。なんでそんなに何度も聞くの?」
ライラが答える。
…先程から、こんな遣り取りが繰り返されていた。
「だって君、あんまりあっさりしてるから……」
シンはライラの少し怒った様な言い方に、戸惑いを隠せず語気が弱まった。
一方ライラは、同じことを何度も何度も聞いてくるシンに苛立っていた。
その上、折角名前を教えたのに、何度も『君』と、シンに呼ばれたことで、つい怒鳴ってしまった。
「ライラよ」
「…え?」
「私の名前はライラよ!君、なんて名前じゃないっ……」
ライラは、シンの口から初めて自分の名前が発せられた時から、その、耳をくすぐられる様な感覚に、何とも云えない心地良さを感じていた。
だから、シンの口から自分の名前を何度も何度も聞きたいのに、彼は途中からまた君としか呼んでくれなくなってしまった。
そのことが、彼女の苛立ちを助長させていた。
「あ、あぁごめん、ライラ」
そんなことは露も知らないシンであったが、どうやら名前を呼んで欲しいらしいという事は分かったので、素直に彼女の名を呼んでみた。