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狼と白頭巾ちゃん

第12章 約束

シンはライラに好意を抱いていたが、だからといって、伝えたところで報われる筈もないことは、充分理解していた。

しかし、理解していたからとはいえ、所詮彼はずっとひとりで生きてきた男。

自分の放った言葉に彼女に依せる想いが熱い声音となって乗ってしまっても、それが相手にどう伝わるかなど、知りもしなかった。

一方ライラは、『可愛い』と言われただけで、何故こんなに自分の顔が熱くなってしまったのか、さっぱり分からない。

暗がりにいて、何故シンに自分の顔の火照りが見えるのかと、ライラが気にすべき点は他にもあったのだが、まったく気付く余裕が無いほどに動揺していた。


ライラは誰もが認める美少女だ。

たとえ彼女がそのことを自覚していなくても、周りの人々から容姿を褒められることは多かった。

だからこそ彼女の母は、彼女がおかしな目に合わない様にと頭巾を被せたり、出掛ける度に注意の言葉をライラに伝えたりしていたのだ。

そんなライラだからこそ、『可愛い』と言われた事など数え切れない程あるわけで。

でも彼女自身は、それが子供という存在に与えられた特権であると認識していたため、どんなに褒められても、心が揺さぶられたりはしなかった。

だがしかし、ライラの心は今、シンのたった一言に揺さぶられてしまって。

その結果、耳まで赤く染めてしまっていて。

更には、そのことをシンに言い当てられてしまったのだ。

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