テキストサイズ

狼と白頭巾ちゃん

第15章 一輪の花

「私、あなたが好きよ、シン。誰よりも、あなたが好き!」


「⁈……ライラ⁈‼」


「だからまた一緒に…」

ライラが言いかけたその時、彼女は近づいてくる足音を聞いた。


(いけない‼)


咄嗟にライラは茂みに飛び込み、シンが彼女を受け止めた。

「ライラ⁈何を…「しっ!黙って私を隠して!」

シンははっと気が付きライラを胸に抱えると、身を翻して木陰に潜んだ。




足音が近付き…、


サクサク…

サクサク…サクサク…


サクサク…



サク…









…やがて消えていった…。






「もう…、行ったみたいだ……」

シンは小声でライラに囁き、抱えていた腕を緩めたが、

ライラは離れようとしない。


戸惑うシンが尋ねる。

「あの…、ライラ?もう大丈夫、だよ?」


「暖かい…」

「え?」

「シンの胸、暖かくて気持ち良い。私、今、あなたに触れてるのね…」


「ライラ…、君…」


シンの胸にうっとりと顔を埋めていたライラに、シンの鼓動は跳ねた。

嬉しくて、愛おしくて、力の限り抱きしめたかった。

でもそれをして良いものか分からず、動けないでいるシンに、


少し顔を上げ、ライラが言った。


「シン、お願いがあるの」

頬をうっすら赤らめるライラに言われ、シンの鼓動は早鐘を打つ。


「お、お願い?」

上ずりながら聞くと、ライラはにっこりと微笑み、

「あの花園に連れて行って?またあの場所であなたと過ごしたい…」



シンは大きく目を見開いてライラの目を見つめ、次に「分かった」と言って頷くと、


ライラの身体を大事そうに抱え、



森の奥深くへと駆け出した…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ