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なつのおと

第3章 遠い虹へ




やがて音が徐々に小さくなり、ゆっくりになって解決音が遠くで響いた。


その最後の音の響きを消えるまで聞いていたくて息を止める。


微かに残るオレンジがペダルによって完全に消されて俺は音楽室の空間に引き戻された。



ピアノに向かっている田中さんを見ると静かに顔をこちらに向けて俺の言葉を待っていた。


「…オレンジ」


「え?」


「オレンジが濃くなったり淡くなったりした」


僅かに眉をひそめた後、目が少しだけ見開かれた気がした。


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