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Uターンズ

第6章 家族

8月始めの朝。

葉子は本社で行われるセミナーに出席するため、いつもより一本早い電車に乗った。


降りる駅の階段に近い扉まで移動し、バッグから単行本を出す。


「…佐伯さん?」

後ろから聞き覚えのある男の声。

振り向くと、茂がすぐ後ろで、吊革につかまって立っていた。


水色のワイシャツにグレーのズボン、ネクタイを締めた姿はお祭りやバーベキューの時の少年ぽい雰囲気と違い、さすが「大人の男」だ。


「小谷さん… やだぁ、全然気付かなかった」

「いつもこの電車?…じゃないですよね、全然会わないし」

「今日は本社でセミナーがあるんで…一本早いんですよ、この時間空いてるんでびっくりしちゃった」

「会社どこ?」
「いつもは大黒寺…今日は大黒寺から地下鉄乗りますけど」
「なんだ、同じだよ~」
「ほんとにぃ?」

茂の勤務先は、駅を挟んで反対側だった。


「そういえば毎日のように遊んでるみたいね、秘密基地……?」
「あぁ、あそこ前から溜まり場になってるよね」


秘密基地とは、最近宅地造成が進んでいる場所の、小高い丘の上にあるスペースのことだ。

低い木に囲まれているので、子ども達はそこにシートをかけて部屋のように見立てて遊んでいる。


1年生から6年生まで入り雑じっており、茜と薫のほかにバーベキューの時に遊んだ守本亜弥、伊藤駿也もいる。

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