おとなりさま
第1章 カラフルオウム
6月半ばの日曜日。
僕は圧迫感を覚えて
目を覚ました。
ぼうっとする頭で、
ベッド脇に置いてあるメガネを
なんとか探し当て、かけてみた。
「………エミルっ!?」
そう叫ぶと、彼女は
にんまりと微笑み、
声を出して笑いはじめた。
ケラケラと陽気に笑う彼女を
ベッドから直ぐさま降ろし、
僕はこう言った。
「エミル!
勝手に部屋に上がり込むなよ!
しかも男のベッドに乗るな!」
なんて不埒な!
流石に古いか、と思って今のは声には出さなかった。
「あははっ!あー…、だあって、
俊ちゃん、声かけたって
全然起きないんだもんっ!
晴美さんに起こして来てって
頼まれたの。」
晴美とは、僕の母親だ。
何故母親が責任もって起こしにこない!
嫁入り前の娘を、
しかも付き合ってもいない男の
部屋に勝手に上げるなんて!
うちの親もエミルも、どうかしている。
僕は大袈裟にため息をひとつ。
「…もう、起きたから。
部屋から出てくれないかな。
着替えるし。」
わかった、とエミルは返事をし、
ペタペタと部屋から出て行った。
彼女の足元を見れば、裸足だった。
…人のお家では靴下を履きましょう。
朝からなんだか疲れた。
起きたばかりだというのに。
ふと時計を見れば、8時を指していた。
おいおい、せめてあと1時間くらいは
寝かせてくれよ。
まだ大学生で、
毎日楽しく生きてるエミルと、
専業主婦の母親に心の中で
悪態をついた。