おとなりさま
第1章 カラフルオウム
寝間着から普段着に着替えると、
ぐぅとお腹が鳴る。
今日の朝食は何だろう、と
考えながら階段を降り、
リビングに入った。
ダイニングテーブルには、
当たり前のように彼女が
モーニングコーヒーをいただいていた。
あれ、ウチ僕以外に兄弟いましたっけ。
エミルは僕が席に着くや否や、一言。
「俊ちゃん、そのポロシャツ
懐かしいね!
高校生の時よく着てたやつじゃん!」
物持ちが良くて悪かったな。
僕はエミルみたいに次から次へと、
新しい物を集めない。
お気に入りを長く使う主義なんだ。
遠回しに、ありえない、
ダサいと言いたいんだろう、
君のことだから。
と、強気に彼女に言えたら、
きっと僕の心の内はスッキリ
するんだろう。
しかし、昔っから僕は
人に強く物を言うのが苦手だ。
そんなんだから、学生の頃から、
よく人畜無害の人だなんて
言われたんだ。
ただ言葉に出さないだけで、
心ではどう思ってるのかも気付かず。
「あ、だんまりだ。
俊ちゃんの十八番だね〜。
そんなに大人しかったら、
俊ちゃん生まれ変わったらウサギに
なっちゃうよ?」
「そんなことないよ。
そしたらエミルはオウムに
なっちゃうよ。」
おしゃべりで、カラフルなオウム。
ほら、ぴったりだ。
「あはっ、いいね!オウム!!」
彼女はまた、ケラケラ笑いはじめた。
しばらくすると、
僕の朝食を母親が運んで来てくれた。
「何々、なんだか楽しそうに
話してるじゃない。
やっぱり、エミルちゃんがいたら
賑やかでいいわねー。」
「そうかな?
んー、でも元気だけが
取り柄だからな、わたし!」
ああ、そうだね。
だって君、何でも笑い飛ばして
悩みなんてなさそうだものね。
いいね、人生得してると思うよ。
僕はまだ熱いコーヒーを啜って飲み、トーストをかじった。