テキストサイズ

おとなりさま

第1章 カラフルオウム




ソワソワして、
落ち着かなくて、
結局味がよくわからなかった。

昼食を終え、僕らは店を出た。


この辺りの地理は詳しくない為、
エミルの後ろを着いて歩くしかなかった。


ずらりと並ぶショーウインドー。
この通りは、ブランドバッグだったり、
オシャレな服を取り扱う店ばかり。



何気なく、ぶらぶら歩いていたら
エミルは、とある場所で立ち止まった。


「ねぇ、俊ちゃん。この服、よくない?」

ショーウインドーに展示されている
服を見ると、メンズの店だった。

ベストやストールといった
小物をごちゃごちゃと飾り付けている。
Tシャツの柄もハデ。


一体、どこがどう良いのだろうか。
シンプルをこよなく愛する僕には、
そのセンスがわからない。


そうかな、とそっけなく返事すると、
エミルは、何で、カワイイじゃん、と言った。

男のファッションに
可愛さを求めてどうするんだ。


「俊ちゃんはねぇ、こういう格好、
絶対似合うよ!
だってさ、優しいオーラ出してるもん。」


だってさ。
つくづく、君とは趣味が合わないね。


僕はシンプルが好きだから、と返すと、
シンプルすぎて
パンチが足りないとダメ出しを喰らった。


嗚呼、もう。

ほっといてくれ!



今、思い出しても
イライラする。

















ポンッ!

「うわぁっ!!」


急に肩を叩かれたのと、
ビックリしたのとで、
変に跳ね上がってしまい、
肩から来る痛みに悶えた。


「わわわ、柏木くん!
なんか…、ゴメンね。大丈夫?」


迫る痛みのリズムに堪えながら、
後ろを振り返った。



「井上先輩!」


笑いを堪えるような顔つきで、
僕の肩に触れたであろう左手は、
行き場を失って宙に浮いたまま。


「なーに、イライラしてるの?
珍しいね、柏木くんが怒ってるなんて。」

「あ…、いや、昨日ちょっと…。」

「あら、彼女と喧嘩でもしたの。
早く仲直りしないとダメよ?」

「違います、自分、彼女なんていませんから!」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ