おとなりさま
第1章 カラフルオウム
ウィン、ウィン、ゴー、カション−−…
大量のコピーが終わるのを待っている時間、
暇だったので、僕は両腕を天井に向けて、
うんと伸びをした。
ピキッ!
「あ゙っ…!」
昨日の運動のお陰で、
僕の右腕と右肩は変に固まって痛いのだ。
筋肉痛の様な、筋違いのような。
日頃の運動不足という言葉が
過ぎりはしたけれど、
昨日の僕が何だか可哀相になるので
敢えてエミルの所為にしたい。
僕は結局、昨日一日、
彼女に付き合わされたのだ。
昼前までずっとバドミントン。
梅雨時で、独特の蒸し暑さの為、
ふたりとも汗だく。
それなのに、
「お腹すいたから、どっか食べに行こう。」
と言うもんだから、
一度ウチへ財布を取りに帰り。
汗をふき、着替えをし。
近所のファミレスはやだ、
オシャレなカフェがいいだの何だの。
結局、電車に乗って、
エミルの大学がある街まで出るハメに。
此処のパスタは最高なんだから、と
彼女オススメのカフェに入り。
周りはカップルか女性ばかりの中、
普段、こういった街中カフェに
入った事のない僕は落ち着かず。
俊ちゃんはどれにするの、と
メニューの催促をされ、
よくわからん、
今まで見たことないような
文字が並ぶ紙を見て少し嫌気がさした。
「何でもいい。僕のは
エミルがよさ気なの頼んで。」
「うーん、じゃあ…、
ブルーチーズとジャガ芋の
ニョッキなんてどう?」
おいしいよ、と微笑むエミル。
ニョッキって何だ、ニョッキって。
知らない横文字に不安を感じつつも、
ニョッキという料理を知らないという
事実をエミルに知られたくなくて、
「じゃあ、それで。」
と答えた。
初めて食べたニョッキというものは、
何だか白玉団子のようだった。