刑事とJK~続編~
第29章 無の男
「あと…50分程度で、ここはなくなる
それまでそこでじっとしていろ」
「…おめぇ、名前は?」
斉藤が男に名前を尋ねたことに対し、ゆうひは驚いた
こんな時に、なぜ名前なんかを聞いているのか…と
「名前…河瀬(カワセ)
下は、捨てた」
「河瀬…"飽きた"っつぅわけ、言ってみろ」
「何で?」
「言え」
斉藤のガンとした態度に、河瀬は渋々口を開いた
「…モテないんだ」
「は?」
耳を疑った
「モテないんだよ、女に」
河瀬はカクンと首を傾けた
「来る日も来る日も寂しくて…ふと町を歩けば、俺以外の人間が幸せそうに暮らしているのが目につく」
河瀬はバンッと床を踏み鳴らした
「見ていてムシャクシャする」
あくまで顔は、無表情だが…
『自分勝手も大概にしろっつの!!!』
「おいゆうひ…」
ゆうひは一歩前に出た
『そういう馬鹿な考えにしかたどり着かないようだから、モテないんでしょ!!?
こっちはいい迷惑なの、装置を止めて!!』
怒りに任せ、怒鳴り散らした
「じゃああんたは、俺を好いてくれるか?」