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ブラバン天下

第1章 空気はもう嫌。

練習を始めたのは12月で、

コンクールは毎年7月の末頃にある。

約8ヶ月間もコンクールの曲を吹き続ける

ということだ。

さとみは嫌で嫌で仕方がなかった。

3rd。

同じクラリネットでも全然違う。

1stはメロディーだらけで、

そのメロディーも

3パートの中で一番高音で吹くことがほとんど。

クラリネットはよく通る音色をしている上に

高音だからよく聞こえる。

美味しいとこどりだ。


クラリネットというのは

主にメロディーを担当する楽器。

しかし3rdには伴奏がやたら多く、

メロディーがないという訳ではないが、

そのメロディーも

1stより1オクターブ低い音域で吹く

ことがほとんどだ。

クラリネットは木管楽器なので

出せる音量に限界がある。

だから、ただでさえ低音で吹く上に、

同じ音を吹く金管楽器達にかき消される。

吹いても吹いても

何も聞こえない。

誰も聞いてない。

居なくても良いんじゃないか。

空気のようなパートだ。

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