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第9章 裏と表

けど、私は酷く怯えていた。
動こうとも身体が震えて、動けず名取との距離が確実に近くなる。

顔の横を掠めた手が木に置かれ
身を強張らせた。

いま、目の前の彼は本当に名取なのかと疑うほど彼が恐いっと思った。なぜなら、黒くニヤついた表情を浮かべていたからだ。

「怯えてるのかな。でも、助けは来ないし
誰も気付かないよ」

そう言って顎で後ろを促す。
その方向を目で追い、皆が楽しそうに遊ぶ姿が見えた。だから、気付かない?
そう思っていたが野原と目が合った。

一瞬だけニヤリと目だけが笑い、わざとらしく視線を逸らした野原

よく分からなくて……

顔をしかめた私の耳に唇を近付け名取は言った。

「分からないって顔してるね。でも、野原と目が合った筈だよ」

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