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第3章 影の存在と私達

渋々受け取った中垣は、出るなり必死に“すみません”と謝り続けていた。何の話しなのかは分からないけど、中垣が可哀想だった。

2、3分くらいで携帯を閉じた彼は疲れ、やつれた顔で私見るなり取り乱した。

「そうだ、逃げよう。今すぐにっ! 俺は逃げるからな!」

そう叫ぶ様子に、私は慌てて中垣の腕を掴んだ。

「ど、どうしたんですか?」

「うるさ―いっ! 俺の命が掛かってんだよ!」

命が?

取り敢えずは、彼を落ち着かせようと私は思って言った。

「大丈夫ですよ、電話で何を言われたかは知りませんが
律は優しい人ですよ?」

すると中垣は、私の手を払い強く言った。

「お前にとってはそうでも、俺にとって奴は天敵なんだよ! 殴り殺される前に、俺は逃げる――っ!」

「え、え? そんな事しませんよ……」

と逃げ出そうとする中垣を止める。

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