
君がくれたぬくもり
第30章 オレンジ
もう帰ろう。
いつまでもうじうじしていられない。
現実を認めなきゃいけないんだ。
「よしっ!」
立ち上がり、手で涙を拭う。
そしてクルッと方向を変えた。
「えっ……」
陽菜は目をぱちぱちとさせる。
驚いた。
…岳がいたんだ。
「岳?!」
「よぉ…」
思わず岳のいる方に走った。
岳は照れ臭そうに笑う。
「なんでいるの?」
「なんでって…
…ここ俺の場所だろ。
お前こそなんでいんだよ。」
ドキン…
“泣いてました”なんて言えない。
慌てて別の理由を探す。
「朝日…朝日見に来たの!」
「ふぅん……」
岳はそれだけ言うと、海の方に歩いて行った。
