
君がくれたぬくもり
第32章 彼女
「はぁ……」
ひとしきり泣き、お風呂を出る。
扉を開けると岳がいた。
壁にもたれかかり、腕組みをしてこちらをジッと見ている。
「……。」
陽菜はパッと下を向き、岳を無視して部屋に向かう。
顔は合わせない。
泣いたことがばれるのが嫌だし…
何より、
軽々しく抱かれた自分が恥ずかしかったから…。
「昨日は……悪かった……」
「………。」
低くて小さな声で岳はそう言う。
それは、“昨日のアレは遊びだった”と認めるということなのか。
この際もうどうでもいいよ…。
岳が遊びだと思うなら、
陽菜もそうするから。
岳があの子と幸せになれるなら
陽菜は悪役を演じるよ……
