
君がくれたぬくもり
第10章 微妙な関係
何も考えずに走る。
すると手首を掴まれた。
「待てよ!」
……また岳だ。
どうしてこの人は陽菜の邪魔ばかりするの?
「離してよっ」
「落ち着け…」
「うるさい!!もう嫌だ。
こんな世界いたく―――」
!!!!
ふさがれる唇。
あまりにも突然で、陽菜の興奮は一気に冷めた。
「……。」
「ほら…帰るぞ。」
「………。」
岳に手を引かれ、来た道を歩く。
家の前まで来て、陽菜は足を止めた。
「……帰りたくない。」
そう言って岳のTシャツの裾を引っ張る。
すると岳は言った。
「んじゃ…海行くか。」
――――――……
―――――――……
海につくと、砂浜にはやっぱり人はいなかった。
大きな岩の向こうにはたくさんの海水浴客がいるけど。
「ここあちぃ…陰行こうぜ」
「ぅん…」
陽菜と岳は大きな木の陰の下に座った。
夏なのに涼しい風が吹き抜ける。
