
君がくれたぬくもり
第10章 微妙な関係
「陽菜……ここに来い。」
岳が指を差したのは、三角座りをしている岳の足の間。
陽菜は黙って言うとおりにした。
岳は陽菜が座ると、自分の方に引き寄せ、陽菜を閉じ込めるように抱きしめた。
そして耳元で囁いた。
「……俺の女になれ。」
陽菜が
岳の女に…?
「あいつに未練あってもいいからさ……俺と付き合えよ。」
「岳……」
「…拒否権はねぇから。」
“拒否権はない”
そう言われると何も言えなくなる。
「陽菜、不感症だよ……?」
「…不感症じゃねぇよ。
ちゃんと感じてただろ?」
「まだ和哉に未練あるし…」
「それでもいい。
俺が忘れさせるから。」
「陽菜のこと裏切らない…?」
「裏切るわけねぇよ…」
岳はそう言って陽菜を抱きしめる腕の力を強めた。
「岳ぅ……」
「全部を愛してやるから…。
だからお前も俺だけを見てればいい。」
不思議だね。
岳の言葉で
陽菜の中の和哉に対する未練が少しだけ薄くなったような気がした。
岳なら陽菜のことを本気で愛してくれるかもしれない。
なら…ちょっとだけ
岳を信用してみようかな?
