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おまわりさんはドS

第4章 隼斗の過去

「徳田君」
クラスメイトからは隼斗隼斗といつも呼ばれていたので、珍しく苗字で呼んでくるヤツに少し驚きながらも、俺は読んでいた本を閉じた。

放課後の図書室。さっきまで俺しかいなかったのに、
いつのまに入ってきたんだろう。

顔をあげてみると、
ニコニコ、いや、ニヤニヤしながら見下ろしてきた。

「瑞木…だっけ。」
「瑞木杏奈だよ。」
「何?」

本当はいつも少し気になってたくせに、少し尊敬してたくせに、
俺はわざと冷たくした。

「ふふ、なーに読んでるの」
「坂裏降機の…
「待ちわびた幻想?」
「そう。」
「サカウラコウキって…あのナントカ大賞とった人でしょ?私もテレビで見て、その本読んでみたかったんだ」

「へぇ…」

顔を近づけてきたこの女の甘い爽やかなシャンプーの香りに、なぜかドキドキしていた。

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