
Sカレっ
第14章 亜矢×久保
江奈が部屋を出て行って、5分ほどして襖を叩く音がした。
トントン
「…どうぞ」
カラカラ…
「…久保くん」
久保くんは、いつもみたいに薄く笑ってはいなかった。
何か張りつめたような、唇を軽く噛み締めていた。
「亜矢、瀬川くんのこと好きなの…?」
口を開いた途端、唐突にその言葉を突きつけられた。
「ぁ……」
気付いてたの……?
久保くん、いつもみたいにあたしに笑ってくれてたのに。
昼間に瀬川くんとの会話で、気付いてたの?
「いいよ。俺は、亜矢が別れたかったら別れる」
「……あたしは、ずっと叶わない恋をしていたの」
久保くんの表情が、ぴくりと変わる。
「小学生の頃からモテて、何をしてもかっこいい瀬川くんは、あたしの初恋だった。中学入ってからも、地元の高校の子をみる度に瀬川くんを探してた……」
ほんと、あたしってサイテー…
自分自身が嫌い。
こんなに優しい久保くんを前にして、瀬川くんが好きなんて……
あたしが黙り込むと、久保くんは苦笑いをして、
「亜矢、俺も叶わぬ恋してたんだよ」
「え…」
亜矢が気になった時、俺はある事を耳にした。
『ねーねー、亜矢って好きな人いる?』
『えー?あたし?……………』
『なぁんだ。他中かぁー。その、誰?瀬川?』
『苗!!あんた、瀬川くん知らないの!?』
『瀬川くんはねぇ、桐崎中のアイドルって…………』
