
山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~
第7章 花の褥(しとね)で眠る
「お前さん、不吉なことを言わないでおくれよ! それじゃ、チルボクまでヘジンのようにいなくなっちたまったみたいじゃないか」
母親がヒステリックに喚き、大泣きした。
インスが凛花を庇うように、さりげなく前に立った。
「ここはもう良い、余計なことは言わずに引っ込んでてくれないか」
インスは小声で囁き、父親の肩に手を置いた。
「ソンボクさんもタンシムさんも落ち着いて。チルボクのことだ、ふと思いついて、別の友達の家に行ったのかもしれません」
「だからって、幾ら何でも、こんなに陽が高くなって帰ってこないなんて、あるはずがないよ」
母親が泣きながら叫ぶ。
「吏房さまは、所詮他人事だから、そんな無責任なことが言えるのさ」
「煩さいッ」
父親が母親に怒鳴り、インスに言った。
「済みませんが、今日のところはお引き取り願えませかね。倅の身を案じて下さるのは有り難いですが、正直、儂も家内もあんたたちのお節介に付き合う気分ではないんですよ」
「判りました。今日はこれで失礼します。また、何かありましたら、必ずお知らせ下さい」
インスは頭を下げ、凛花を促して家の外に出た。
凛花は、実のところ、母親の言うとおりだと思い始めていた。ここに来るまでは何かの間違いであって欲しいと思っていたけれど、現実として、昼近くまでチルボクが飲み友達の家から戻らないなど、考えられない。あの若者はそんな男では断じてない。
でなければ、ヘジンが恋したりはしなかったろう。
良くないことがチルボクの身に起こったのだ。何らかの事件、事故に巻き込まれたと考えた方が良いのではないか。
「きっと無事だ」
楽観的な考えが間違っていないことを祈りながら、呟いてみる。
じっとしていると、次から次へと嫌なことばかり考えてしまい、最悪の結果を想像してしまう。
凛花は知らず身体が震えてきた。
「文承、そなた―、震えてるのか?」
インスが愕いたように見つめてくるのに、凛花はそっと首を振った。
母親がヒステリックに喚き、大泣きした。
インスが凛花を庇うように、さりげなく前に立った。
「ここはもう良い、余計なことは言わずに引っ込んでてくれないか」
インスは小声で囁き、父親の肩に手を置いた。
「ソンボクさんもタンシムさんも落ち着いて。チルボクのことだ、ふと思いついて、別の友達の家に行ったのかもしれません」
「だからって、幾ら何でも、こんなに陽が高くなって帰ってこないなんて、あるはずがないよ」
母親が泣きながら叫ぶ。
「吏房さまは、所詮他人事だから、そんな無責任なことが言えるのさ」
「煩さいッ」
父親が母親に怒鳴り、インスに言った。
「済みませんが、今日のところはお引き取り願えませかね。倅の身を案じて下さるのは有り難いですが、正直、儂も家内もあんたたちのお節介に付き合う気分ではないんですよ」
「判りました。今日はこれで失礼します。また、何かありましたら、必ずお知らせ下さい」
インスは頭を下げ、凛花を促して家の外に出た。
凛花は、実のところ、母親の言うとおりだと思い始めていた。ここに来るまでは何かの間違いであって欲しいと思っていたけれど、現実として、昼近くまでチルボクが飲み友達の家から戻らないなど、考えられない。あの若者はそんな男では断じてない。
でなければ、ヘジンが恋したりはしなかったろう。
良くないことがチルボクの身に起こったのだ。何らかの事件、事故に巻き込まれたと考えた方が良いのではないか。
「きっと無事だ」
楽観的な考えが間違っていないことを祈りながら、呟いてみる。
じっとしていると、次から次へと嫌なことばかり考えてしまい、最悪の結果を想像してしまう。
凛花は知らず身体が震えてきた。
「文承、そなた―、震えてるのか?」
インスが愕いたように見つめてくるのに、凛花はそっと首を振った。
