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山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~

第2章 もみじあおいの庭

 初めての経験に戸惑い、怯えながらも、これほどまでに自分が彼に求められているのかと思うと、女としての歓びが湧いてくる。
 角度を変えた口づけは永遠に続くかのように思えた。いつもの穏やかな文龍とは別人のように荒々しく求められ、凛花は翻弄されてしまう。呼吸さえ奪うような口づけに、凛花が空気を求めて僅かに口を開いた。
 その隙に、文龍の舌が巧みに忍び込み、怯える凛花の舌を絡め取り、吸い上げる。互いの唾液が混じり合い、静寂に響く水音が何とも淫猥に聞こえた。
 その音が凛花に堪らない羞恥を呼び起こし、凛花はかすかに身を捩る。
 が、文龍はそれを誘(いざな)いと解したらしく、口づけを深めた。彼の舌から漸く解放された時、凛花の双眸は潤み、唇は腫れていた。
 その何とも扇情的な姿は、これまで文龍が眼にしてきた無垢な少女とはかけ離れていたらしい。文龍は熱のこもったまなざしで凛花を見つめると、いきなり噛みつくような口づけを仕掛けてきた。愕いて身を退こうとする彼女の後頭部を彼の大きな手のひらが押さえ込み、身動きできなくなる。
 二度目の口づけは最初より、更に烈しく凛花の何もかもを奪い尽くすかのようだった。
 文龍の唇がいったん離れ、次に彼の舌が凛花の下唇をなぞった時、凛花は愕きはしたものの、もう顔は引かなかった。
 文龍が手のひらで凛花の胸のふくらみを包む。ビクンと跳ねた華奢な身体に乙女の怯えと恥じらいを感じたらしい文龍は、宥めるように逞しい手で凛花の背を優しく撫でた。
 淡い若草色の薄い絹地を通して、その手の灼けるような熱さが感じられる。文龍の手が乳房の中心をなぞる手つきは絶妙だった。布地の表面に触れるか触れないかのきわどさは、凛花にもどかしいような、もっと強く触れて欲しいような感覚さえ憶えさせ。
 凛花は思わず、そんな淫らな想いを抱いてしまった自分をひどく恥じた。
 文龍の手が動き、服の布地が胸の先端をこする度、身体の中心を妖しいふるえが駆け抜け、やがて、その未知の感覚は漣(さざなみ)のように下半身から全身へとひろがってゆく。
 はしたないと思いながらも、凛花は溜息混じりの声を洩らし、文龍の首に両腕を巻き付けた。
「凛花」
 文龍が凛花を腕に抱いた姿勢で、そっと床に横たえる。流石に、これには凛花も抵抗した。

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