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第5章 case3 【貴方ニ効果的ナ"復シュウ"ヲ】 1

精神的疲れを自覚したのは、日がとっぷり暮れ、月が煌々と照らす頃。

ただ、唇を合わせる行為だけだというのに、侵食の加速度が凄い。

「甘い毒を飲まされている訳ですから」

逃げられる訳が無い、という的場君。用があってきたのか、ただふらりと部屋に入ったのか、斎のいないこの部屋で、彼は椅子に座り、私を見ている。

何処に行ったのかな?とちらりと思う。ま、斎はいない方が精神的に翻弄されないから、楽ではあるけと。

「斎様は、お出かけに。そろそろ、佳境に入りますから」

「・・・何、の?」

止まる思考と動作。視線を向けると、的場君の微かな笑顔。

・・・笑顔が、黒い?

黒いという表現はおかしい。でもそれ以外に表現しにくい笑顔。楽しそうでもなく、どちらかというと秘めた何かの・・・。

「姫様のお部屋に夜、普通は入るべきではないのですが、斎様がいない間に、お話が」

黒い笑顔を張り付けたまま、的場君は言った。

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