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第10章 case5 【私ヲ見テ】 1

新学期。

「おはよう」

教室で悠里ちゃんに声をかけると、いつもと違う表情に、戸惑う。

「どうしたの?」

何気ない問いに帰ってきたのは、返事ではなく・・・腕を引っ張られて、着いた先は、第1図書室。

本棚と本棚の間、人が来そうにない、古めかしい本が並ぶ場所で、悠里ちゃんが出したのは・・・封筒。

「これ?」

「うん」

手渡された封筒の中身は、真っ白な紙に1行、シンプルに。

『彼方が好きです』

「差出人も何も解らないの。ただ『金本悠里様』って封筒に書いてあるから、私宛っていうのは、解るけど・・・」

確かに、誰が出したか解らないものに、返事を出すのは難しく・・・。

「放っておく、しかない」
「・・・よね」

ただ、気になったのは、何故『彼方』なの・・・か。普通は『貴方』もしくは『貴女』なのに?

・・・書いた人が間違えただけ?

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