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第10章 case5 【私ヲ見テ】 1

人好きのする優しげな笑みの、黒田生徒会長。

他人に対して不愛想な斎とは、正反対なイメージ。

ただ、斎とメールするほど気が合うなら、黒田先輩はヒトだけど、結構な曲者の可能性は・・・あると思う。

「それじゃよろしく」

ひらひらひらっと手を振り、そのまま生徒会室に入っていく彼を、目で追いつつ、

お嬢様にある意味、宣戦布告された事よって、直接ではないにしろ、あの屋敷に帰る事実に、少し気が重くなった。

だからといって、屋敷のあの一室に強制転送される今の状況を、止めさせる・・・というのは、私でも無理で。

「・・・憂鬱だなあ」

今の心境を正直に口に出すと、憂鬱感が現実味を帯びて来て、身体にまとわりつくようなイメージを想像してしまったので、

重い気持ちを振り払うかのように、ぶんぶんと首を振り、考える事をこれ以上放棄して、

とりあえず自分の教室に戻るために茶封筒片手に、足を向けた。

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