テキストサイズ

contract

第10章 case5 【私ヲ見テ】 1

「いや、どうなんだろうね・・・」

ストーカーという言葉を出しておいてなんだけど、ここは流石に濁してた方が良いと思ってわざととぼける。

「ところで斎藤君、寮生じゃなかったよね?」

「俺は、自宅組。そろそろ帰る。俺はとりあえず聞かなかった事にするから。また明日な」

話は終わった事で帰ろうとしていた斎藤君を、引き留める。

「待って斎藤君。悠里ちゃんを途中まで送ってあげて」

「いいけど・・・藤沢。それ金本の都合もあるだろ?先生の方が・・・」

さっきのストーカーの話がまだ頭には残っているからか、斎藤君の答えも若干慎重。

「送らなくていいけど、もう他の友達いないし、1人で帰るのはちょっと怖いから、途中まで一緒に居てくれる?」

ニコッと斎藤君に向かって笑う悠里ちゃん。視線が急に彷徨う斎藤君。

「・・・別にいいけど」

小さい声で、斎藤君はぽつりと返事を返した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ