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第10章 case5 【私ヲ見テ】 1

「逃げなくても、良くない?」

「逃げて、ない」

「そうかな?」

一歩、また一歩。岩倉君が進み、私が下がる。何時まで経ってもお互いの距離は同じ。

廊下だから、後ろに何もないと解っているから、後ろは振り向かない。

・・・違う、岩倉君が怖いから振り向けない。

「確かに、藤沢さんは、邪魔、だよね?」

「え?」

「僕と金本さんの間を邪魔して引き裂こうなんて・・・」

・・・も、もしかして本物のストーカー・・・?そして、彼が・・・?

「もしかして・・・手紙?」

呟くと、にっこり笑う岩倉君。笑った顔も、何処か狂気めいている。

「何の事だろう・・・ね?」

でも肯定する気は無いらしく、とぼけて見せる。それか逆に、怖さを引き立たせている気がする。

昼間、明るい場所、でも後者は閑散としていて、人がいない。

どこに、逃げたらいい?・・・・・・斎。

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