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第1章 プロローグ

冴えわたる空気が支配する今の時刻は23時。敷地内で唯一明かりかなく、ひっそり静まり返ったこの場所で。

・・・地上から数メートル、太い桜の幹に座り、地上を眺め口元だけ笑みを浮かべた人物が、見ている視線の先は、とある女生徒。

見上げれば見える可能性のある姿だが、地上に挿す光は夜空に浮かぶ月明かりのみ。

女生徒にとって、視界に入らない人物はいないのも同然で、

今日も、願いを携え、桜に願う。

純粋な願いは、純粋に叶う偶然もあるが・・・歪んだ願いは、タダでは、叶えられる訳は・・・ない。

いつしか、女生徒が居なくなり、辺りは静寂を取り戻したはずだった、が、

女生徒は見上げなくて正解、といったところだろうか。

桜に腰掛ける人物が手にしていたのは、丸いボール・・・ではなく、人の頭だったのだから。

「人の命は儚いねえ・・・」

誰に言うでもなく零れた独り言とともに、血に濡れた手の甲をペロリと舐めた。

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