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第19章 case8 【私ニ伸ビル複数ノ手】 1

「そろそろ、出せ。お前なら出来るだろ?」

「買いかぶり過ぎじゃねぇの?カ・ナ・メちゃん?」

「相変わらず、ヤな奴」

「慣れ合う心算はねえって、最初っから言ってんでしょうよ」

確か年は俺の方が10近く上なんだが?全く年上敬えよ、と一瞬思う。ただ、俺も敬ってはねえけど。例えば絢乃チャンの父親、とか。

「お前は当主候補から外れた。誰についていくか、賢いお前ならわかるだろ?」

「さぁて、ね」

煙草の火を消し、最後の紫煙をふぅっと吐き出す。

一族の柵なんてどうでもいい。俺にとっては一族すら、駒。一時期、こんな俺ですら、当主候補に担ぎ上げられた。実績はピカイチだが、性格に難有り、の注釈つきで。

それに比べ、目の前の要人は、じーさまばーさま連中のお気に入り。上手く猫やら狐やら狸やら、被れるだけの何かをかぶりまくり、従順なお坊ちゃまを演じている。

「そんなにしがみ付きたいものかー?」

どう考えても旨みのあるポジションには見えない。一族の当主というものは。

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